大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)3243号 判決

被告人 小林正夫

〔抄 録〕

弁護人の控訴趣意中の論旨第一点について。

刑事訴訟法第三百三十五条第一項の規定によれば、有罪の言渡をするには、罪となるべき事実を認めた理由として、ただ、証拠の標目を示せば充分であるわけではあるが、それかといつて、判決に証拠の標目として挙示されているいづれの証拠で、いづれの犯罪事実が認められるのか、判文と記録とを照合しても明白でないときは、その判決は、刑事訴訟法第三百七十八条第四号前段にいわゆる判決に理由を附さない違法あるに帰し到底その破棄を免かれないことはいうまでもないところである。今これを本件について見るのに、原判決が、その認定した二個の窃盗事実に対する証拠の標目として単に「被害届」なる表示のみをもつてしたことは、事の理解に供すべき表現として抽象にすぎ、その当を欠くもののあるを免かれ難いとするも、その提示しているいわゆる「被害届」は、判文及び記録によれば、原判示各窃盗の被害者中岡彌平治、大谷鉉永各提出の盗難被害届(記録十二丁及び十三丁編綴)を指称するものであることが、自づから明らかであるから、右冒頭説示するところに照らし、原判決が、罪となるべき事実を認定した証拠上の理由として単に「被害届」なる表現を用いたことをもつて、原判決には、理由を附さない違法があると主張する所論は採用できない。論旨は理由がない。

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